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干し杏は、誰にも責められない
ワインの頭痛と亜硫酸塩をめぐる、長すぎる濡れ衣

「オーガニックワインなら、翌朝に残らない」——ワインの話をしていると、この一言はほぼ必ず出てくる。
「オーガニックワインなら、翌朝に残らない」——ワインの話をしていると、この一言はほぼ必ず出てくる。保存料が入っていないから、頭が痛くならない。よくできた説明だ。ただ、順に確かめていくと、この話は少し困ったことになる。
まず、量の話から。亜硫酸塩は、ワインだけの特別な添加物ではない。干した杏やレーズンには、ワインよりずっと多く——桁が違うほど使われていることも珍しくない。もし亜硫酸塩が頭痛の犯人なら、ドライフルーツの袋は、ワインの瓶よりよほど恐ろしいものになるはずだ。けれど、干し杏を三粒つまんで頭が痛くなった、という話はあまり聞かない。
もうひとつ、厄介な事実がある。赤ワインは、白ワインより亜硫酸塩が少ないのが普通だ。赤には色素やタンニンがあって酸化に強いぶん、添加を抑えられる。それなのに「ワインで頭が痛くなる」と言うとき、人はたいてい赤を指している。犯人とされる物質が少ないほうが、より強く疑われている。証言としては、かなり具合が悪い。
では、オーガニックワインは亜硫酸塩を含まないのか。含む。EUの規則では有機ワインにも亜硫酸塩の添加が認められていて、上限が通常より低く定められているだけだ。しかもそれ以前に、酵母は発酵の過程で二酸化硫黄を自然につくる。亜硫酸塩がまったく入っていないワインというものは、事実上ほとんど存在しない。
では有機認証は、何を約束しているのか。畑のことだ。土をどう扱い、何を撒かず、どう育てたか。それは十分に立派な約束で、ワインを選ぶ理由として何ら劣らない。ただそれは、あなたの頭にではなく、土地に向けられた約束だ。頭痛の犯人のほうは、まだ決着していない。アルコールそのもの、脱水、ヒスタミンやチラミン、タンニン——候補は並んでいるが、どれも決定打を欠いている。
「あの土地の人はワインを飲んで長生きする」という話も、よく似た形をしている。ある土地の長寿を、食卓の一本に帰したくなる気持ちはわかる。けれど長生きは、何を食べ、どれだけ歩き、誰と夕食をとるか——ほどけない束のような条件の上にある。近年では、適量の飲酒が寿命を延ばすという古い定説そのものが、統計の取り方を理由に疑われている。健康を損ねて酒をやめた人まで「飲まない人」に数えていたのではないか、というのだ。だとすれば、比べていた相手が最初から違っていたことになる。
結局のところ、私たちはこの物語を欲しがっているのだと思う。好きなものを、健康の棚に置いておきたいのだ。でも、たぶんそこまでしなくていい。オーガニックワインを選ぶ理由は、頭痛予防ではなく、土のつくり方と、単純においしいこと。それで足りている。言い訳のいらないものを、言い訳なしで飲めるのは、けっこう贅沢なことだ。
ABC編集部
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